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最高裁判所第一小法廷 昭和39年(オ)497号 判決

主文

理由

上告人の上告理由について。

およそ問屋が委託の趣旨に従い第三者から権利を取得し、その後これを委託者に移転しない間に破産した場合においては、委託者は、右権利につき取戻権を行使することができることは、当裁判所の判例とするところである(昭和四〇年(オ)第二五号、同四三年七月一一日第一小法廷判決)。そして、原審の確定したところによれば、島根証券株式会社は、かねて被上告人のために同人の委託の趣旨に従い伊藤銀証券株式会社から自己の名において本件三菱化成工業株式会社株式計五〇〇株(内一〇〇株は旧商号日本化成工業株式会社のまま)を譲り受け、これを保管中、昭和三六年二月一七日破産宣告を受けるに至つたというのである。したがつて、右の事実によれば、右破産会社から被上告人に対し右株式の譲渡があつたかどうかにかかわりなく、委託者たる被上告人は、上告人に対し、本件株式につき取戻権を行使することができるものといわなければならない。論旨は、右破産会社から被上告人に対し本件株式の譲渡があつたとする原審の認定判断に違法があるというのであるが、前説示のとおり、これは、原判決の結論に影響のない傍論を非難するに帰し、採用することができない。(略)

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